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アメリカンピアノについて(その2)ブランド [ピアノ]

前回は総論としての「アメリカンピアノの魅力」について述べましたが、
今度は米国のピアノ・ブランドについて紹介しましょう。

尤も、予めお断りしますが、スタインウェィは別として、現在の米国ブランドの大多数が米国製でなく韓国や中国で生産されており、或は、中国生産になる以前の米国生産時代から、本来の品質や機能を維持せず、本来は高級品だったものが、普及品クラスの品質と価格に下げられているケースも多々あります。

つまり、現在の新品アメリカンブランドは、メーカーが作った「コピー商品」みたいなものであり、ここでいう「アメリカンピアノ」とは別物と考えた方が無難でしょう。

又、各ブランドについては、僕の個人的経験でのみ印象を述べており、たまたま弾いた個体と本来とで異なっているかも知れない事も明かしておきます。

さて、アメリカのピアノブランドですが、誰でも知っているのはスタインウェィでしょう。スタインウェィはハンブルクとニューヨーク製とがあり、元々はニューヨークで立ち上げたブランドながら、日本ではハンブルク製が圧倒的多数を占めます。これはハンブルク製の方が優れている、とか好まれる、という理由ではなく、元々ニューヨーク製は米国とカナダのみを市場対象とし、ヨーロッパや日本はハンブルグ・スタインウェィ社の担当エリアだったからです。
いわば「正規物」がハンブルク、並行輸入物がニューヨークだった訳ですが、
例えばフェスティバルホールにあった、沢山の一流ピアニストが絶賛したスタインウェィはワイセンベルクというピアニストが持って来たニューヨークスタインウェィであり、僕もそうですが、ハンブルクよりニューヨーク製の方が好きな人も日本では決して少なくありません。

ところでニューヨークスタインウェィですが、一般論として1910年〜40年代頃に製造された物がベストで、当時はハンブルク製を凌いだ、と言います。勿論、今、実際に購入するとなると、原型もだけでなくオーバーホール等を経ての実際の状態を判断せねばなりませんが、僕の経験では、ガタボロであっても、この時代の物には凄く良い音がする個体があった事は確かです。

逆に驚く程、悪いのが50〜70年代位のもの。50〜60年代というのは、ジャズといいクラシックといい米国音楽のピークであり、素晴らしい名演奏のレコード(CD)が多数ありますが、大体、新品ではなく戦前のスタインウェィで録音されている事が多く、演奏もさる事ながら録音やピアノの音色も非常に美しいものが少なくありません。

僕が好きなのレコード(CD)を上げますと、ジャズの「ビル・エバンス/ソロ・セッションズvol.1」「同/ムーン・ビームス」、クラシックでは「グレン・グールド/シェーンペルク作品集」「ホロビッツ/シューマン子供の情景」等。

ちなみに、僕はさぼと熱心に色々なCDを集める、というタイプでは全くなく、たまたま聴いたなかで良かった、というものを上げただけです。
上記のレコードに共通する特徴として「残響のになさ」が上げれます。
「残響が長い程、音楽的だ」という発想も分らなくもないのですが、残響のない部屋で、しかも接近したマイク位置で録音されたものの方が、なんだか演奏するすぐ横に立って聴いてるようで、僕は好きです。

残響が長いから綺麗、という点でジャズの「キース・ジャレット/ケルン・コンサート」やクラシックの「リヒテル/バッハ平均律ピアノ曲集1」を絶賛する人がいますが、どちらもタッチやペタリングの細かい部分が分らず、どこ迄行っても響きが同じなので聴いてて退屈します。勿論、演奏は良いのですが。

キース・ジャレットについては、録音という観点では「キース・ジャレット/祈り〜グルジェフの世界」が大好きです。これはキースの自宅スタジオで、多分、シンプルなマイクで録音されたように思えますが、殆ど残響なし、眼前の演奏が聴けます。ちなみにキースのスタジオにはハンブルクとニューヨークのスタインウェィが一台づつあり、この録音はハンブルク・スタインウェィかな、と思います。話しが脱線しますが、眼前の録音という観点ではジャズの「菊池雅章/ピアノ・ソロ」が素晴らしい。これも菊池さんの自宅録音で、愛用の1890年代(!)のハンブルク・スタインウェィで録音したそうです。なかりガタボロのピアノですが、もの凄く響きがよく、深い響きを出しています。或はニューエイジ・ミュージックの「村松健/水の中のピアノ」も自宅録音もので、1910年前後のニューヨークスタインウェィのセミコンで録音されていますが、演奏、録音共、最良です。

話しのをニューヨーク・スタインウェィの今昔に戻しますと、戦前のが良く、
50〜70年代のは駄目だ、という話しは聞いてました。僕自身、あるディラーで(そんなに、ちゃんと調整している店ではないのですが)数台の家庭サイズのニューヨークスタインウェィ中古を弾きまして、なるほど戦前のは音色といいタッチといい良いのですが、戦後のは、なんだか国産みたいなルーズなタッチと大味な音色で駄目だな、と感じて想い出があります。

ちなみに、50年代のハンブルクスタインウェィは絶品!でして、柔らかく、よく歌う音色を持っています。よく「経年変化で良い音色になりますよ」とは言われるので僕もそうだろうなぁ、と思っていたのですが、たまたま弾いた50年代のハンブルクスタインウェィが、当時、工場で選定した新品のスタインウェイで録音したと言われる「ルービンシュタイン/ショパン・ノクターン集」とよく似た雰囲気の音色だった事から、元々違うものなのだ、と思うようになりました。

ちなみに、この時分のニューヨークスタインウェィは良くないのですが、アメリカンピアノならば、むしろボルドウィンが良いと思います。
ボルドウィンは、スタインウェィよりは落ちるものの「Aランク」に位置するブランドで、当時はドイツのベヒシュタインを傘下に収め、「世界一のフルコンを作る」とばかりにベヒシュタインの技術者を動員して、SD10というフルコンを作ったりしました。

日本のヤマハもカワイもフルコンがありますから、ピアノメーカーの全てにフルコンがあるように錯覚されがちですが、そうではなく、アップライトしかなかったり、小型グランドしかなかったりするのが普通です。というか「セミコンならばメーソンアンドハムリン、フルコンはスタインウェィ、アップライトはボルドウィン」という風に得意分野で住み分けている訳です。

50年代当時のニューヨークスタインウェィはCBS社が買収したせいか、どんどん質が低下するに対し、ボルドウィンはやる気満々で素晴らしいフルコンを作りました。ボルドウィンは、だから、どことなくベヒシュタイン的なピアノですが、80年代以後、同じくベヒシュタインを真似したDiapason(日本)を愛用していた僕には親しみ易く、且つ、、機械的精度では落ちる物の、響板の質や設計の良さで、ボルドウィンの方がずっと良いな、と感じました。

尤も80年代頃から、再びニューヨークスタインウェィは良くなった、或は、ハンブルクとの差が減った、というのが通説です。僕は、80年代以後の新品のニューヨークスタインウェィはほんの数台を弾いただけですから、断定はできませんし、真偽は知りませんが、ハンブルクスタインウェィとの部材共用で品質を持ち直したのと、逆にハンブルグスタインウェィの質が低下しており、両者に差がなくなった、という所でしょうか。

勿論、ビンテージと呼ばれる中古品は、部材の交換等のオーバーホールが必要で、その点では問題がない新品と比べて、どちらか良いとも言えませんが、僕自身は、圧倒的にビンテージものに興味があります。

又、一口にアメリカンブランドと言っても下記の三種に分けられる、という点にも注意が必要です。

1,ニューヨーク・スタインウェイ
2,かってのAクラス;メーソン&ハムリン、クナーペ,チッカリング
3,BCクラス;ボルドウィン,キンボール,ウーリッツァー等

ニューヨークスタインウェィに関しては50〜70年代の品質低下を経て、
80年代以後は、やはりAクラスとしての品質を保持しています。
問題は2の「かってのAクラス」でして、メーソンやチッカリング等は、戦前はむしろスタインウェイに勝るとも劣らぬ堂々たる品質だったものが、戦後は品質のみならず設計等も異なる低下もしくは変更されるBクラスへと転落した事です。

これはフランスのプレイエルやエラール等も同様で、戦前はスタインウェイよりも上のクラスだったのが、戦後はドイツのシンメルが名前だけ替えて作るBCクラスに転落してしまいました。ちなみに、プレイエルについては、近年、フランス資本で再開したそうですが、やはり別物と言えます。

尤も、チッカリングにしてもですが、本来、プレイエルやチッカリング、ブリュトナー等は、スタインウェイと全く異なるアクションの仕組みに特性がありましたが、戦後は「普通のアクション」に組み替えられてしまい、且、響板や鉄骨等も普及品クラスか、それよりは上という程度に落としてしまいました。

僕は、たまたま昔日のプレイエル、チッカリング、ベヒシュタイン等を弾いた事がありますが、現在イメージされるピアノのタッチとはかなり異なる感覚で、普通の人には到底弾けないだろうな、と思わせられました。かと言って、それが悪いとも思えず、むしろ「スタインウェイの機械的優秀性」というか見方を変えれば「誰が弾いても同じ音になる」事の割り切りが乱暴だな、と感じました。

もし、僕が凄いお金持ち、且、ピアノコレクターであれば、戦前のスタインウェイに加え、これらの銘記、メーソン&ハムリンやプレイエル、チッカリングをコレクションし、修復したいものです。

ちなみに、フランス資本に戻ってからのプレイエルは弾いた殆ど弾いた事がないのですが、少なくとも「普及品」としては非常に素晴らしいな、と感じました。
「家庭向きのピアノ」として第一級のものかと思います。
又、メーソン&ハムリンについては、実は昔のも現代のも全く弾いた事がなく、
想像でしか言えませんが、かっては「アメリカのベーゼンドルファー」と呼ばれた、ある意味でスタインウェイを凌ぐ銘記の一つでした。
というか、スタインウェイとは兄弟みたいな関係で、スタインウェイとは全く異なるシステムだが、スタインウェイ的に素晴らしいアクションを持ち、且、メロディくな音色を持つ名器だったそうです。
僕自身は弾いた事がないので何ともいえないのですが、レコードで聴く限り、スタインウェイよりも自分の好みに合うな、と思いました。又、ある時期、このメイソン&ハムリンの代理店をやろうかな、と当時の総代理店で話した事もあります。
当時は、確かに昔日の良さは全くないが、それでもメーソン本来のアクションは継続されており、Bクラスとして(つまり国産と比べると)やはり良いピアノだ、という話しでした。尤も、総代理店が倒産した事と、その後は生産が米国から中国に変わり、関わる筈の技術者が中国生産ならば暫く手を出すな、といい、そのままになっています。
これも弾いてないから、最近のメーソンは、You-Tube等で聴く限り、国産とどっこいどっこいの安請け合いな音質なのと、機械的に安心できないので、あまり関心がありませんが。

むしろ、僕自身が興味があるのは、スタインウェィや没落Aクラスでなく、始めからBCクラスの米国ピアノです。

問題は、これらのBCクラスも、最早、生産を中国に移しており、かっての「アメリカン」ではなくなっています。但し、アメリカ生産時代のものも、アメリカでは安価な中古品として流通しており、「安い、美味い」という訳で非常に関心を寄せています。次回は、これらのBCクラスについて述べてみます。


スタインウェイ&サンズ モデルM



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コメント 4

サミー

今日は。下記httpがオープンできると良いんですけど。
とても面白く拝読しています。多くが共感を覚えます。共感を感じないものは私の知識の欠如故のことです。弾きこなせないながら古いYamahaを持っています。先週45歳男性の友人が”ピアノが弾けるようになりたい、ショパンを弾いてみたい” 動機が夢一杯で良いですね!で、5万5千ドルのC-2Baby Grand を2万5千ドル、キャッシュ払いと、リセッションを盾にとっての購入。私も欲しい。う~んスタンウェイだなー で、貴殿のブログにぶち当たりました。Nice going!

http://cgi.ebay.com/6-11-STEINWAY-MODEL-B-ROSEWOOD-ART-CASE-GRAND-PIANO-/330524380229?pt=LH_DefaultDomain_0&hash=item4cf4c9cc45
by サミー (2011-02-04 16:54) 

kf-jazzy

サミー様、多忙というか、暇なのですが仕事がノロくてブログの方はご無沙汰してました。古いYamahaをお待ちでしたか。私の実弟ももの凄く古いYamahaを愛用していますが、今のと違って「ずっと弾いたり、聴き続けたくなる音=本物のピアノの音」をしていますね。今時のプラスチックみたいな音のする「代用ピアノ」とか電子ピアノではなく。

最近、バタバタしている一因に、とあるCafeのプロデュースを始め、家具選び、食器選びからしているのですが、家具にしても60年代位迄の「木でできた家具」と同じ格好でも合板とでも随分違うな、と感じました。

スタインウェイは良くて当り前、というか、結局、ベヒシュタインやベーゼンも気になりつつ、やっぱりスタインウェイかな、と皆、落ち着きみたいですね。かつ、やはり1970年代位迄の「ビンテージ」と今時のとでは、「木製」VS「合板」位の音の差があるようです。
(尤も、今時のピアノを弾く事があまりありませんが…。)

実は、個人的にはハマっている(といっても所有している訳ではありませんが)のが、グレン・グールドも愛用したチッカリングという米国ブランドの1920年代以前のピアノなのです。スタインウェイより、ずっと敏感なタッチとメロディアスな音色で、もし自宅用に買うとすればこれかな、と空想しました。

ところで「古い国産ピアノ」について、ちょっと気になる出来事がありましたので、久々にブログに書きますのでお読み下さい。
by kf-jazzy (2011-03-02 14:57) 

サミー

Mr.Jazzy. 
コーディネート、楽しそうなお忙しさで好いですね。

又、又ピアノレッスン始めました。7歳でこけて以来歴史は続いています。中学生で母の親戚付き合いの強要から、音大卒の其処の嫁さんからバイエル終了!
成人してからは周りには数多の一流ジャズピアニスト。
彼らの流麗なプレイは、どうもブリュグミュラー等などとは全然違う概念らく憧れました。
楽典の勉強していない私には、それらは見るもの聴くもので、自分が弾ける領域ではないモノと最初から本能的に決め付けていました。

その後、気が向いた時自分のピアノを進化させようとはして来ました。
シティーカッレッジでのクラスは、初心者とは区別されそれぞれ教材を貰います。ハノンは当たり前に認知されていますが、米国ではバイエルは余り知られていない様で一瞥される程度です。
インストラクターから課題を貰います。
私は確か最初はスコット・ジョプリンだったと思います。

長い年月、気が向くとクラスを取り、バッハのツゥーパァート・インペンションで問題露出。もっとスケールを勉強するようにとの宣託。古い話です。

そして貴殿のブログを読んでの転機です。
うぅ~ん、バッハ大好き!もっと勉強したい!何故かジャズを感じます。あるところは自然にスウィングします。
じゃぁ、此処でいっそうジャズピアノを習おうと思い立ちました。

問題は、歳の所為で根気とヤル気が物凄く減少している事です。
クラシック上がりで、ディヴ・ブルーベック・インスティテゥーションの若きピアニストから教えて貰い出したばかりです。何時まで続くでしょうか? サミー



by サミー (2011-03-23 09:13) 

サミー

Ms. jazz.
ネットで遊んでました。下のhttpをオープンすると投稿記事に目が止まりました。Debssyがウォルター・スタンウェーに送ったオリジナルコピー、完全なものを見つけたそうです。
http://www.youtube.com/watch?v=Ir8snfWIU2M

今はCDでも何でも音楽媒体は色々ありますが。
こう云うもので一般に伝えていたんですね。そうなんですか?
http://www.flickr.com/photos/elsie/3329409460/
by サミー (2011-03-30 15:36) 

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